痛風は突然、足の親指の関節が赤く腫れあがって痛む病気で、贅沢病ともいわれ、世間では良く知られていますよね。一見、何の関係もなさそうに見える病気同士ですが、実は痛風と糖尿病とは関係があるのです。
痛風の前段階を高尿酸血症と言いますが、高尿酸血症も糖尿病と同じように遺伝的な要因と、食べ過ぎやストレスなどの生活習慣の要因とが重なって発症します。
糖尿病の人は高尿酸血症に。高尿酸血症の人は糖尿病に。お互いなりやすいとも言えるのです。
今回は、似ているけれども糖尿病とはちょっと違う痛風について、詳しく説明していきます。
1.強烈な痛み、痛風の発症メカニズム
血液中に取り込まれたプリン体が代謝によって尿酸となり、血液中に多くの尿酸がとどまった状態を高尿酸血症といいます。
通常、尿酸値は男性5.5 mg/dL、女性4.5 mg/dLですが、7.0 mg/dL以上になると血液中に溶けきれなかった尿酸が結晶化して腎臓や手足の関節などに蓄積します。関節などにできた尿酸結晶に炎症が起こるのが痛風発作です。
痛風発作は突然、関節が赤く腫れあがって激痛が走ります。風が吹いただけでも痛いという症状から痛風と名付けられたといわれており、9割以上が男性の患者さんで発症年齢は30~50代に多くみられます。
2.痛風の原因は高尿酸血症
痛風の原因は尿酸が溜まりやすい体質の遺伝があり、それに過食やストレス、運動不足などの生活習慣の要因が加わることで発症するといわれています。
尿酸値が高くなる要因は、尿酸が多く作られる場合と尿酸の排泄機能が低下する場合で、食事に含まれるプリン体や果糖の摂取量が多い、激しいスポーツやハードワーク、強いストレス、アルコール、脱水、高圧利尿薬の副作用、遺伝的要因、肥満、腎機能の低下、ホルモン異常などがあげられます。
3.痛風の合併症には注意が必要です
手足の関節や皮膚の下に結節ができる痛風結節、腎臓に尿酸結晶が溜まり腎臓機能が低下する慢性腎臓病、腎臓や膀胱、尿管、尿道などに尿酸結晶が溜まって結石が生じる尿路結石、高血圧、肥満、脂質異常症、糖尿病に伴う動脈硬化、心臓・血管障害などがあります。
3.痛みを出さない、取り除くために痛風の治療とは
痛風、高尿酸血症の治療は、痛風発作の痛みの軽減、合併症の予防、併発しやすい肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病など、生活習慣病の体重、血圧、血清脂質、血糖値のコントロール、改善、動脈硬化や脳卒中、心筋梗塞などの心臓・血管障害の予防を行います。
薬物療法は、尿酸値が9mg/dl以上、糖尿病や高血圧、脂質異常症、心疾患、腎障害などを合併している場合には8mg/dlで開始されます。
痛風発作の痛みを抑える消炎鎮痛剤、ステロイド剤などや、尿酸値を下げるために、尿酸が作られることを抑える尿酸産生抑制薬(ザイロリック、フェブリクなど)、尿酸の排泄を促す尿酸排泄促進薬(ユリノーム、ベネシットなど)が用いられます。
4.痛風の生活上で注意したいこととは?
痛風の方は肥満であることが多く、日頃から食事のカロリー制限を行い、軽度の運動を継続しましょう。
食事は、魚卵やレバー、タコやカニなどプリン体を多く含む食品を控え、尿をアルカリ性にして、尿中の尿酸を溶けやすくする野菜をしっかり摂ることを心掛けましょう。
アルコールは尿酸をたくさん作り、尿酸の排泄も阻害するので極力控えるようにするのが賢明です。特にビールはプリン体を多く含んでいます。
極端なカロリー制限は体内のケトン体を増やして尿酸の排泄を阻害するので、自己流の食事管理ではなく、自分の体格、活動量、症状に合った食事内容を医師や管理栄養士の指導を仰ぎましょう。
運動もハードな無酸素運動は尿酸が増えてしまうので、ウォーキングなどの有酸素運動を毎日続けることが大切です。
高血圧症や糖尿病、脂質異常症などを抱えている方は、それぞれの疾患の治療も行っていきます。まだ、これらの疾患を発症していない方でも、血圧や血糖値、血清脂質の管理を行っていくことが必要ですよ。
5.糖尿病と痛風の関係って?
痛風と糖尿病は、共に、なりやすい体質の遺伝があり、食べ過ぎ、運動不足、ストレスなどの生活習慣が合わさって発症する生活習慣病です。
血糖値が高くなると尿酸値は少し下がるため、非常に高い血糖値で、なおかつ痛風発作もひどいという方はあまりおらず、糖尿病になる前の耐糖能障害の時期に高尿酸血症を併発する方が多くみられます。
耐糖能障害と高尿酸血症を併発すると、動脈硬化が進み、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞などの心臓・血管病を発症するリスクが高くなります。
血糖値、尿酸値が高いと言われたら血圧、血糖値、血清脂質の管理を徹底することはもちろん、これらを予防するためにも毎日の生活習慣を見直していきましょう。