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インスリン療法は、インスリンの分泌が足りない、インスリンの効きが悪くて高血糖状態になっているのを、インスリンを注射し、からだに不足しているインスリンを補います。

インスリンそのものが作れず、絶対的にインスリンが不足する1型糖尿病の治療ではインスリン療法が必須となります。

2型糖尿病でも、食事療法、運動療法、薬物療法をもっても血糖コントロールの改善の兆しがみられない場合はインスリン療法を行います。

ここでは、インスリン療法について詳しく解説していきます。

1.インスリン療法とは

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膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンは、1日に渡って決まった量が分泌され続けていますが、食後など、血糖値が上昇する場合はインスリンの追加の分泌が行われます。

平均してずっと分泌されているものを基礎分泌、血糖値の上昇に合わせて追加で分泌されるものを追加分泌といいます。

1型糖尿病は基礎分泌、追加分泌ともにほとんどみられず、2型糖尿病では分泌はみられるものの、量が少なかったり、分泌されるタイミングが遅かったりして高血糖を起こします。

2型糖尿病の場合は、経口薬を服用しても血糖コントロールが改善しない場合や他の合併症のために経口薬を服用できない場合、著しい高血糖がみられ、早急に血糖値の低下が必要な場合、妊娠中や妊娠希望、授乳中などの場合にインスリン療法が選択され、残存しているインスリン分泌を助けて血糖値のコントロールを図ります。

インスリン療法は経口薬に比べて、症状や状態に合わせて効き目の強さや促したい効果を操作することが容易であり、血糖値のコントロールを行いやすいのが特徴です。

2.インスリン製剤の種類

インスリン療法で使われる薬をインスリン製剤といい、皮下注射後に効き始めるまでの時間、作用が持続する時間によって時効型溶解、超速効型、速効型、中間型、混合型の5種類に分けられます。

<時効型溶解インスリン>

製品名:トレシーバ、レベミル、ランタス

基礎分泌を補うインスリン製剤で、注射してからほぼ1日を通して血糖値を下げる効果が持続します。注射後1~2時間で効果がみられ、1日中作用が持続します。

基礎分泌を補助する製剤なので、食後の高血糖がみられる場合は、経口血糖降下薬や超速効型インスリン製剤などとの併用が必要となります。

血糖値の状態や生活スタイルに合わせて朝食前、夕食前、寝る前の1日1~2回注射します。

<超速効型インスリン>

製品名:ノボラピッド、ヒューマログ

追加分泌を補うインスリン製剤で注射してすぐ10分~20分で効き目が現れますが、作用時間は3~5時間ほどと短いのが特徴です。

食事直前に注射することで食後の血糖値の上昇を抑えることができます。外出や仕事などで食事の時間が前後しても食事前に打つことで効果を発揮できます。

食前の血糖値が高い場合は、時効型溶解インスリンや中間型インスリンが併用されます。

効き目が早く現れ、強く作用しますが、持続時間は短いので、注射後すぐに食事を摂れない時や運動を行う時は低血糖に注意する必要があります。

<速効型インスリン>

製品名: ノボリンR、ヒューマリンR

追加分泌を補うインスリン製剤で食前30分前に注射します。30分~1時間程度で効果が現れ、5~8時間程度で効果がなくなります。
  
食前30分前に打つことが必要なので、食事時間が不規則な方や夜間に高血糖がみられる場合は超速効型インスリンへの変更が検討されます。

<中間型インスリン>

製品名:ノボリンN、ヒューマログN

時効型溶解と超速効型・速効型インスリンの間の効き目がみられます。朝食の前に注射し、1~3時間程度で効果が現れ、作用は18~24時間持続します。

人によって作用の持続時間は異なり、持続時間が短い場合は1日2回注射するなどの調整が必要です。また、中間型インスリンの効き目は山形に作用するので、効き目がみられる時間を考慮して食事を摂る必要があります。

<混合型インスリン>

製品名:ヒューマログミックス25、ノボラピッド30ミックス

超速効型、速効型、中間型インスリン製剤を混ぜ合わせた製剤で基礎分泌と追加分泌の両方を補う効果を持ちます。

注射後に超速効型、速効型と同じ作用がみられ、作用の持続時間は中間型と同じぐらい続きます。

朝食前、夕食前、朝食と夕食前の1日1~2回注射します。昼食後~夕食前の血糖値が高くなりやすいので、1日の食事の時間がほぼ決まっている方には使いやすい製剤ですが、食事時間が不規則な方には向いていません。

3.インスリン注射を打つタイミング

<強化インスリン療法>

強化インスリン療法とは、インスリン療法開始時に選択される治療法で、血糖自己測定を行い、1日の血糖値の変動を自分で把握しながら、医師より指示されたインスリン投与量を食事や運動の量などを考慮して調整し、注射する方法です。

きちんと血糖自己測定とインスリン注射を行える自己管理能力と、低血糖を起こした時に対処できることが必須です。

上手く行えれば、健康な方のインスリン分泌に近づけることができ、インスリン分泌作用の回復や低下予防を行うことができます。

<インスリン頻回注射(4回法)>

強化インスリン療法でまず行われるのがインスリン頻回注射です。

インスリンの基礎分泌を時効型溶解、中間型インスリン製剤で1日1~2回補い、追加分泌を超速効型、速効型インスリン製剤で1日3回補い、計1日3~5回の注射を行います。血糖自己測定を行いながら、1日4回注射を行う4回法が用いられることが多いです。

超速効型、速効型インスリンのいずれかを朝食・昼食・夕食前の各3回注射し、寝る前に時効型溶解、中間型インスリンのいずれかを注射し、1日計4回注射します。

<インスリン注射の他のパターン>

インスリン注射のパターンは強化インスリン療法の1日4回法以外にも、

・ 追加分泌を補う目的で超速効型インスリン、速効型インスリンを毎食前に注射する3回法

・ 混合型インスリンを朝食前と夕食前の1日2回注射する2回法

・ 混合型インスリンを朝食前、夕食前の1日2回と昼食前に超速効型、速効型インスリンのいずれかを追加する3回法

・ 基礎分泌を補う目的で時効型溶解、中間型インスリンのいずれかを寝る前、または朝食前に1日1回注射する1回法

・ 基礎分泌を時効型溶解インスリンで補い、追加分泌は経口薬のスルホニル尿素薬で補うパターンなどがあります。

<持続皮下インスリン注入(CSLL)療法>

インスリンポンプを体に取り付け、持続的に皮下組織へインスリンを注入する治療法です。
超速効型インスリンが持続的に注入され、食事時はインスリンポンプのボタンを押して追加注入を行います。

タイミングに応じて注射を行うインスリン療法では血糖コントロールの改善が難しい方や、血糖コントロールの管理を徹底したい場合、生活スタイルに応じてインスリン注射を行うのが難しい場合などに用いられます。小児・若年1型糖尿病患者や妊婦に適応されることもあります。

自己血糖測定と食事の内容や量、運動などに応じてインスリンの注入量を調節できることや、アクティブな生活にも対応できるというメリットがありますが、インスリン分泌がほとんどみられない方や重度の自律神経障害を合併する方は適応できない場合があります。CSLL療法を行うには、CSLL療法を熟知しているスタッフからの指導が必要であり、導入している施設で受けることができます。

3.インスリン自己注射の方法と注意点

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インスリン療法はインスリンを自己にて皮下組織に注射します。最近は簡単な操作で注射することが可能なペン型注入器やキット製剤などが用いられています。

インスリン注射を行う場所は、吸収が速い腹部に行うことが多いですが、腹部以外では、上腕、臀部、大腿などに行われます。

<インスリン自己注射の注意点>

・ 同じところに注射し続けると皮膚が硬くなるので、毎回少しずつ打つ場所をずらして注射をしましょう。

・ インスリン結晶がある白濁したインスリン製剤の場合は注射する前に良く振ります。注射の前に、空気を抜き、針がしっかり出るかを確認するために試し打ちをしましょう。

・ 打つ時間、製剤の種類、単位数を確認し、注射は針の根元まで刺します。打った後は10秒静止し、使用した針は必ず廃棄して毎回新しいものに変えましょう。