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運動療法は食事療法とともに糖尿病の治療の基本となります。

食事療法と運動療法とを合わせて行うことは、血糖値を下げる、血糖コントロールの安定に非常に効果的です。

また、血糖値を下げる血糖コントロールが改善するだけではなく、糖尿病によってもたらされる症状や、動脈硬化の予防、加齢によって引き起こされる様々な症状の予防にも効果があります。

ただし、誰でも運動療法を行っていいわけではありません。運動を行うことでかえって身体の状態を悪くする方もいらっしゃいます。

血糖値を下げるための運動療法における効果と運動療法を行う上で注意すべき点、どのような運動をすればよいのか、などを詳しく解説していきます。

1.”糖尿病改善”運動療法5つの改善効果とは

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糖尿病の治療には、食事療法と並んで運動療法が基本とされていますが、なぜ運動療法が糖尿病の治療に必要なのでしょうか?

運動療法には以下のような効果改善が期待できます。

1. 血糖値の上昇を抑える働き

運動を行うと筋肉が使われるので、筋肉を動かすためのエネルギーとして血液中のブドウ糖が多量に利用され、血糖値を抑える働きをします。

食後30分~2時間以内運動は、食後の血糖値の上昇を抑える効果があるとされています。

2. 高血糖時におけるインスリン抵抗性の改善

運動不足が続くと、インスリンが血液中のブドウ糖を取り込んでエネルギーに変換するという作用が行われず、インスリンの働きが弱くなるインスリン抵抗性が生まれます。

運動量が少なくなると体力も落ち、ますます毎日の活動量が減ってしまいます。基礎代謝も低下して脂肪が燃焼しにくくなり、内臓脂肪が増えて肥満となりやすくなります。このことがさらにインスリン抵抗性を強めるという悪循環を起こすのです。

インスリン抵抗性が強くなると血液中のブドウ糖とインスリンの濃度が高くなり、血糖値の上昇と高インスリン血症を招きます。

運動を継続して行うことはインスリン抵抗性を改善し、血糖値の上昇を防ぎます。

3. インスリン分泌機能の回復

インスリンの分泌を促進するインクレチンというホルモン(GLP-1、GIP)があり、食事療法と運動療法を3カ月継続するとGIPの分泌が増加し、インスリンの分泌が促進されて、血糖コントロールの改善につながるといわれています。

4. 運動療法の効果に基礎代謝の向上

運動を継続することで筋肉量が増加すると、筋肉で消費されるエネルギー量が多くなるので基礎代謝が向上します。

インスリン抵抗性も改善されるため、血糖値を下げる効果が見込まれ、血糖コントロールの改善につながります。

5. 肥満、ストレス、運動不足の解消

糖尿病は食べ過ぎ、肥満、ストレスから起こる生活習慣病といわれています。運動を行うことで、食事によって摂りすぎたエネルギーを消費し、肥満の解消や加齢による体力や心肺機能、運動機能の低下を防ぎます。

高血圧や高尿酸血症、高血圧や脂質異常症といった糖尿病以外の生活習慣病の予防にもなります。

また、ストレスの発散ともなり、達成感、爽快感といった心理的な充実を得ることも、血糖値を下げるための効果として期待できます。

2.運動療法を行う時の注意点

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運動療法は糖尿病の治療の柱となりますが、正しい知識を持って臨まないと病状の悪化や身体の痛みなどをもたらします。

運動療法を始める前には、運動をしても良いのか、どのくらいの運動を行えばよいのかを主治医や運動療法の指導者に確認し、自分の状態や症状に合った血糖値改善運動プログラムを実施するようにしましょう。

<運動療法を行ってはいけない人>

・ 増殖網膜症、増殖前網膜症で出血するリスクが高い場合、網膜症でレーザー光凝固後3~6カ月以内の場合

・ 心筋梗塞や狭心症などの心臓・血管病がある場合

・ 感染症を発症しており発熱や体の不調がみられる場合

・ 腎不全がある場合

・ 重症糖尿病自律神経障害がみられる場合

・ 血糖コントロールが著しく悪い場合(空腹時血糖値250mg/dL以上)

・ Ⅰ型糖尿病患者でケトーシスがみられる場合

<運動の制限が必要な人>

・ 網膜症がある場合

・ 壊疽がある場合

・ 収縮期血圧180mmHg以上、拡張期血圧110mmHg以上の場合

・ 変形性関節症など、整形外科的な問題がある場合

<糖尿病の合併症がある人の注意点>

・ 糖尿病性網膜症がある場合は、血圧の上昇によって眼底出血のリスクが高まるので、原則激しい運動は行いません。病状によって運動の制限や禁止が指導されます。

・ 糖尿病性腎症がある場合は、顕性腎症期以降に運動の制限が出てきます。体力や全身耐久性、生活の質を維持する目的で、透析療法期でも軽い運動が行われます。

・ 糖尿病神経障害があり足に壊疽がみられる場合は、足への荷重が症状の悪化につながるため、足への負荷が少ない椅子に座っての体操などのプログラムが推奨されます。自律神経障害がある場合は、運動によって心拍数や収縮期血圧の低下などの突然死のリスクが高まるため、運動療法は禁止です。

・ 心筋梗塞や狭心症がある場合、適切な運動は生活の質を改善しますが、過度な運動は血圧や心拍数に影響を与えるためプログラム内容を考慮する必要があります。

3.Ⅰ型糖尿病の運動療法は間接効果で血糖値を下げる

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1型糖尿病の場合は上記のような運動療法による直接的な効果は得られませんが、運動によるインスリンの働きが改善され、間接的な効果が期待できます。

運動によるエネルギーの消費が大きくなると低血糖となるリスクが高まるため、血糖自己測定を行い、運動量と血糖値の変化に合わせた運動プログラムの実施、運動前後の捕食、インスリン注射量の調整などを行う必要があります。

4.糖尿病改善運動療法のプログラム

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糖尿病患者さんに行われる運動療法のプログラムは、その患者さんの状態や目的に合わせて、運動の内容、運動強度、1回の運動時間、1週間または1日に行う回数、運動を行うタイミング(朝、昼、夜、食事前など)を決めて行います。

<運動の内容>

エネルギーの消費を促し、心肺機能や持久力の向上、インスリン抵抗性の改善、脂肪の燃焼を促すウォーキング、自転車エルゴメーターなどの有酸素運動と、筋力、筋肉量の増強、基礎代謝の向上を促す筋力トレーニングの2つを組み合わせて行う事で、血糖値の改善を目指します。

有酸素運動も筋力トレーニングも負荷の少ない運動から始め、散歩程度のウォーキングや
自分の足の重さを利用して行う体操、セラバンドやペットボトルダンベルなど低負荷での筋力増強訓練などを行います。

日常生活こそが一番の運動という考え方もあり、部屋でじっと座ってテレビを見るのではなく、掃除、洗濯、買い物、片付けなどの家事を行うことや新聞を取りに行く、お茶を入れに行くなど積極的に動くことを心掛け、日常生活の動きそのものを運動に変えてエネルギーの消費量をアップし、基礎代謝の向上や筋力・体力の維持・改善を図りましょう。

<運動強度>

糖尿病の場合、運動強度は軽すぎても効果がなく、強すぎると息が上がって運動を続けられず、突然死のリスクも高まります。

運動を行う際の脈拍の目安として、1分間の脈拍数は、60歳以上は100拍まで、59歳以下は120拍までとします。運動開始直後からではなく、徐々に脈拍数を上げてキープできるようにすることが、血糖値を下げるためには効果的といわれています。

時計があれば自分でも計ることはできますが、腕時計タイプの脈拍計を用いると運動しながらでも確認でき、コントロールに役立ちます。

<運動の時間と回数>

有酸素運動は10~30分程度を週3~5回、筋力トレーニングは1セット10~15回を週2日以上行うことが推奨されています。

普段はエレベーターや車を使うところを階段や歩きに変える、テレビを見ながら足上げを行う、など日常生活の中に運動を取り入れて毎日継続することもおすすめです。

初めは短い時間、少ない回数から開始し、慣れてきたら時間や回数を増やして行うことが良いでしょう。

<運動のタイミング>

食後の高血糖を抑えるには食後30分~2時間以内に運動を行うと効果的ですが、難しい場合は朝起きてすぐ、朝食前、深夜、空腹時を避けて行うようにしましょう。

体調がすぐれない場合や運動中に気分が悪くなった時などは運動を中止するようにしましょう。

血糖値を下げたいけど運動習慣がない場合は

糖尿病をはじめとする、生活習慣病の予防改善に運動は大変効果が期待できます。今まで運動習慣がなかった場合、少しずつ始めることが血糖値を安定値に維持するためには大切です。糖尿病は進行すると大変重篤状態になる疾患です。血糖値を下げるためにも、主治医の指示に従いながら、運動療法を上手に取り入れて下さい。