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「小児糖尿病」ってご存知ですか?

糖尿病は食べ過ぎや運動不足などの不摂生からなる大人の病気と思われがちですが、最近では中学生や高校生が糖尿病になっているのです。

もっと小さな子供も糖尿病になっています。でも、小さい子供がなる糖尿病は、不摂生からなる糖尿病とは少し仕組みが違います。

大人に多い糖尿病は2型糖尿病ですが、小児糖尿病のほとんどは1型糖尿病です。

「小児糖尿病」とはどのような病気なのでしょうか?

ここでは、あまり知られていない「小児糖尿病」について、詳しく説明していきます。

1.小児糖尿病の症状は?

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数日~数週間という短期間で一気に高血糖状態となり、喉の渇き、水分をやたらと欲しがる、頻繁にトイレへ行くなどの症状で始まります。症状が進むと、たくさん食べているのに痩せていく体がだるい、疲れやすく横になっていることが多いなどがみられるようになります。

この段階で糖尿病と診断されることが多いですが、放っておくと、食欲がなくなり、昏睡がみられ、命が危険な状態となります。学校の尿検査で運よく見つかるケースもあります。

2.小児糖尿病の原因は?

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発病の原因は、はっきりと解明されていませんが、1型糖尿病を発症しやすい遺伝子と、環境因子が関係しているといわれています。

ですが、遺伝子が受け継がれただけで発症することはなく、2型糖尿病に比べると、1型糖尿病の遺伝は少ないこともわかっています。

遺伝よりも大きな影響があるとされているのが環境因子です。

ウイルス感染などが引き金となって自己免疫機構が破綻し、腎臓のβ細胞が破壊されてインスリンが作れなくなるとことが原因の一つです。

β細胞が破壊されたからといってすぐに症状が出るわけではありません。β細胞の破壊が広がり、インスリンが不足して症状が出るまでに数カ月~数年間を要することもあります。

自己免疫が関係せずに発症することもあり、化学物質の影響という説や、海外では乳児期に母乳以外の人工栄養や牛乳で育てると1型糖尿病の発症率が1.5倍高くなるという研究結果も出ています。

3.小児糖尿病のメカニズム

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<血糖の働き>

私たちの体や脳を動かしているエネルギーは、食べ物が消化吸収されてブドウ糖へと変換されたものです。

ブドウ糖は血液中に溶け込み、全身に運ばれてエネルギーとして利用されます。

血液中に溶け込んでいるブドウ糖を血糖といい、血糖は食事やその他の影響を受けて変動します。

血糖をいつも一定の値でコントロールしているのが膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンで、血液中のブドウ糖を全身の各細胞に取り込んでエネルギーに変換することや、ブドウ糖を効率よく使うための働きをしています。

<高血糖になると>

インスリンが不足するとブドウ糖は細胞に取り込まれることなく、血液中に高濃度で残ることになります。この状態が高血糖です。

高血糖になると、体は血液中の血糖を下げようとして体の中の水分を利用して糖を尿に溶かして排泄します。体の中や細胞の中の水分は奪われて脱水となり、頻尿や喉の渇き、水分を欲しがるなどの症状が現れます。

インスリンが不足するとエネルギーも作られなくなるので、体は、筋肉や脂肪を分解してエネルギーを作りだそうとします。そうすると、食べているのに痩せるということがみられるようになります。

<ケトアシドーシスって?>

エネルギーを得るために脂肪が分解されると、ケトン体という物質が作られて体に溜まり、血液が酸性の状態になります。これがケトアシドーシスといわれる状態です。

主に1型糖尿病でみられ、嘔吐や意識障害、昏睡を起こして大変危険な状態です。

<高血糖が成長に与える影響とは?>

エネルギーは体や脳を動かすだけではなく、成長にも大きく関わっています。成長には多大なエネルギーが必要なので、インスリンが不足すると背が伸びにくい、発達が遅れるなどの影響が出てきます。

4.小児糖尿病の治療

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Ⅰ型糖尿病の場合は、インスリンを作るもとの部分が障害を受け、インスリンが作り出せない状態のため、インスリンを注射で補うインスリン療法が必須です。合わせて、その効果を高める食事療法、運動療法が実施されます。

<インスリン剤の種類>

インスリン剤には次の種類があります。
・ 超速効型
・ 速効型
・ 中間型
・ 時効型
・ 混合型

それぞれ、食事前や寝る前など、生活スタイルや年齢、血糖コントロールの具合などに合わせて2回法、3回法、4回法、ポンプ療法、強化インスリン療法など、打つ時間、打つ回数に応じて選択されます。

<血糖値の目標値>

血糖値のコントロールの目標は次の通りで、低血糖を起こさないように、個人に合った目標値が定められます。(日本小児内分泌学会策定)
・ 食前90~145㎎/dl
・ 食後90~180㎎/dl
・ 就寝時120~180㎎/dl
・ HbA1c7.5%未満

<治療のバランス>

2型糖尿病の場合は、食事療法と運動療法が基本です。
・ 食事療法:年齢に合ったカロリー摂取、栄養バランスの整った食事
・ 運動療法:身長にあった体重を目標に運動+血糖降下薬、インスリン注射薬

インスリン療法と食事療法、運動療法は治療の3本柱です。食事、運動、インスリンの3つのバランスが崩れると、
・ インスリンの作用、運動量<食事量=高血糖
・ 食事量<運動量、インスリンの作用=低血糖

上記のように高血糖や低血糖を起こすので上手にコントロールできるようにしましょう。

5.小児糖尿病の合併症

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<低血糖>

・ 症状:冷や汗、顔面蒼白、あくび、傾眠、空腹感、機嫌が悪いなどの症状、重症では昏睡

低血糖症状がみられたら、すぐに砂糖水、ブドウ糖、甘いジュースなどを飲んで安静にしましょう。意識障害がある場合はグルカゴン注射や救急搬送が必要です。

<高血糖>

・ 症状:喉の渇き、水分を頻回に摂る、トイレに何回も行く、重症では意識障害

他の病気にかかった時やストレスを強く感じた時なども高血糖となりやすく、インスリン注射の調整が必要です。インスリン注射の勝手な自己調整は大変危険な行為ですので、必ず主治医の指示に従いましょう。

<高血糖状態が続くとみられる症状>

網膜症、腎症、神経障害、失明、腎不全、足の壊疽、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞、歯周病、感染症など

6.小児糖尿病の学校・家庭での生活

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小児糖尿病は大人の糖尿病と違い、成長過程に起こる糖尿病です。そのため、各発達時期に合わせたサポートを行います。

<乳幼児期>

血糖変動が大きく、食事やインスリン注射のこまめな調整が必要です。

食事のむら食いや注射を嫌がることもあるので、親の負担も大きいです。子供は自分で症状を訴えられないので、低血糖のサインを見逃さないようにしましょう。

<学童期>

親から離れて学校生活を送り、捕食やインスリン注射などの自己管理を行います。

低血糖が起こらないように運動前後で捕食やインスリン注射の調整などをして、血糖コントロールを行いましょう。そのためには、本人と親、学校、主治医との連携、サポートが不可欠です。

学校行事や学校外のイベントなども自己管理が行なえていれば皆と同じように楽しめます。この時期に子供が自己管理を行い、周りの友達と同じ経験を積むことがポイントです。自信がつくことで子供の将来の生活の幅が広がるでしょう。

7.小児糖尿病と思春期

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思春期に入ると、療養の主体が本人となります。二次性徴を迎えると、心も体も不安定となり、血糖値の変動も大きくなります。

周りの友達と自分とを比べて劣等感を感じたり、将来を悲観して治療の意欲を失くしたりすることもあります。けれども、血糖コントロールが上手く行えていれば皆と同じ社会生活が送れます。

将来やりたいことを目指して積極的な人生が送れるように、本人の治療への前向きな姿勢を親や周囲がサポートしていきましょう。