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この記事を読んでくれているあなたは、きっと不妊や妊活に興味があるのですよね。あなた自身やパートナーが不妊だったり、不妊と診断されてはいないけれど自分の体のことがなんとなく不安になったり。これはそんな人の疑問をスッキリ解決できる、保存版コラムです。まずは好きなところから目を通してみてくださいね。そして「不妊とはどんなことか」について掘り下げていきます。

不妊症の定義とは

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以前は「2年」通常の性行を行っていても妊娠しない場合を不妊としていましたが、平成27年8月に「1年」通常の性行を行っていても妊娠しない場合を不妊、と定義が変更されました。これはWHOなどの定義に日本産婦人科学会が合わせた結果です。また「妊娠のために医学的介入が必要な場合は期間を問わない」という一文が追加され、例えば卵管が詰まっていたり精子が少なすぎたりして妊娠のためには治療を要する、といった場合は1年経過せずとも不妊と診断されるようになりました。

日本産婦人科学会としては、この定義変更により、晩婚化や女性のキャリア形成指向が高まるなどで女性の妊娠する年齢が上昇する中、早期に不妊を発見し治療できるように、との意味合いで、定義の改定を行ったようです。

男性が原因の不妊

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次に、男性の不妊について考えてみましょう。
様々な病気がそうであるように、男性不妊にも先天性・後天性のものが存在します。
先天性のものは、遺伝、あるいは発育段階でなんらかの原因により不妊になったケースです。
後天性のものの原因はさまざまで、肥満や糖尿病、ストレス、アルコール、薬物などさまざまな原因が考えられます。

男性不妊のおよそ90%は精子を作る機能自体に問題がある、造精機能障害です。原因は、精巣の異常や、ホルモン分泌の異常などです。

一度の射精の中に存在する精子は、数億個と言われています。その精子の数が少なかったり、あるいは卵子までたどり着くだけの運動能力を持っていない場合、不妊の原因になりうるのです。

造精機能障害には、無精子症、乏精子症、精子無力症があります。無精子症は精液中にまったく精子がない状態です。乏精子症は精液中の精子の数が少ない状態で、WHOの定義によれば精子が1mlあたり1500万個以下の状態を指します。通常妊娠に適している精子の数が1mlあたり4000万個であることを考えると、低い数字となっています。精子無力症は精子の運動率が悪い状態のことです。精子運動率が32%未満、もしくは高速に直進する精子の数が25%未満の状態を指します。それぞれの検査方法、治療方法については後述します。

他に男性不妊の原因として、性機能障害、精路通過障害が挙げられます。性機能障害は勃起障害(ED)や射精障害(膣内射精不能症)のことで、性行時、男性器が性行できる状態にならなかったり、なんらかの理由で女性の膣内に射精できなくなったりしている状態です。勃起障害の原因としては、糖尿病などの病気が原因であるものや、女性に過度な期待を抱いている、もしくは過度に自分に自信がない、極度のフェティシズムを持っているなどが原因の場合もあります。射精障害の原因として多いのは、誤ったマスターベーションの仕方をしているため、膣の刺激では射精できないケースが挙げられます。

精路通過障害は、精巣で精子が作られ、やがて外に出る過程のどこかで、なんらかの理由、例えば輸精管(精子の通り道)がねじれて塞がっている、という状態のことです。

男性不妊の検査方法・治療方法

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では、男性不妊の検査・治療方法について説明します。

造精機能障害検査について

造精機能障害を疑った場合は、精子の状態を診ます。精子の状態を検査する方法として、あらかじめ精子採取用のカップなどを医療機関から受け取り、自宅で採精して医療機関に提出する方法、もしくは医療機関内でそれらを済ませる方法があります。

正確なデータを求めるために、採取精の前は禁欲します。禁欲は4日から5日程度です。禁欲期間が短すぎると精液の濃度が薄すぎで検査の値が狂います。また、長すぎると精子の運動率を落としてしまいます。

採精の方法は、マスターベーションにて専用の容器に入れ、自宅で採精した場合は1時間以内に医療機関に提出します。精子は温度変化に敏感なので、運ぶときに極端に温めたり冷やしたりしないように気を付けます。20℃から40℃が適温のため、下着に入れて持ち運ぶのが良いとされています。医療機関で採精した場合はそのまま提出します。精液の状態はその時の状況により変化しやすいため、一般的には3か月以内に2回検査を行います。

精液の検査については、顕微鏡を使用しての目視による検査は保険診療の適応となります。他に、保険の適応外となりますが光学ズーム付き顕微鏡搭載の「精子特性分析機」を使用することで、より正確に、詳細なデータを取得することも可能です。

治療方法はですが、造精機能障害の程度に応じてタイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精という選択肢があります。

タイミング法とは、女性の排卵日を検査により推測し、それに合わせて性行をすることです。人工授精とは、女性の排卵日前日~当日に医師が採取された精子を子宮内に注入することです。精子から雑菌などを取り除き、濃縮した状態で注入します。体外受精は、子宮内から卵子を取り出し、体外で受精、培養したのちに子宮に戻す方法です。顕微授精はほぼ体外受精と同じ手順ですが、体外受精は卵子に精子をふりかけて自然に受精するのを待つのに対し、顕微授精は顕微鏡で見ながらピペットという道具を使って卵子の中に直接精子を注入します。これにより、より確実に受精卵を作るのです。

無精子症と診断された場合は精巣や精巣上体に精子が存在していれば顕微授精での治療が可能です。乏精子症の場合、病気の程度に応じてタイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精を行います。精子無力症の場合も、人工授精や顕微授精を行います。

精路通過障害検査について

精路通過障害を疑った場合「どこで」「どのように」通過障害を起こしているかにより対処法が変わってきます。まずは問診・視診・触診により、二次性徴の発現状態、内分泌系の異常、代謝性疾患の有無などについて調べ、どの部分が通過障害を起こしているかの見当を付けます。そして、その部分に対してより詳細な検査を行っていきます。

精路通過障害の原因は大きく分けると3つで、精巣上体の炎症、先天的な輸精管欠損、後天的な輸精管の欠損です。後天的な輸精管の欠損の例として、幼児期に行った鼠経ヘルニアの手術の時に輸精管を傷つけてしまっている、などが挙げられます。

治療は通過障害を起こしている部分を元に戻すことを検討しますが、難しい場合は精巣から直接精子を採取することで受精卵を作ります。

女性が原因の不妊

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では次に、女性が原因の不妊についてです。

女性の不妊は大きく分けて5つの原因があります。排卵に関すること(排卵因子)、卵管に関すること(卵管因子)、子宮に関すること(子宮因子)、子宮頚管部に関すること(頸管因子)、免疫異常に関すること(免疫因子)です。

排卵因子の不妊は、排卵が起こらないことによる不妊です。その原因はさまざまですが、高プロラクチン血症や過度なダイエットによる無排卵が挙げられます。

卵管因子の不妊は、端的に言えば「卵管が詰まっている」状態です。性感染症の一つであるクラミジアは女性の多くが罹患しても無症状なため放置されやすいのですが、それが原因で卵管の癒着を起こすことがあります。

子宮因子の不妊は、子宮筋腫が主な原因です。中でも子宮の内側へと隆起する粘膜下筋腫ができていた場合、受精卵の子宮への着床を妨げることがあります。それだけにとどまらず、精子が卵子へ到達する過程に子宮筋腫ができることで受精を難しくしているという側面もあります。
アッシャーマン症候群(子宮腔癒着症)という症状も子宮因子不妊の原因の一つです。子宮の壁どうしが癒着してしまう状態で、薄いフィルムのようなものから分厚い癒着になっているものまで様々です。中絶や流産にともなう掻爬施術が主な原因です。
先天的な子宮奇形も不妊の原因となりえますが、どちらかというと流産の原因になりやすい傾向があります。

頸管因子の不妊は、頸管粘液(おりもの)の異常により、精子が子宮に到達しにくくなることで起こります。頸管粘液はアルカリ性で膣の酸性を中和する働きがあります。精液はアルカリ性で精子は酸に弱いため、頸管粘液で膣の酸性を中和することは受精する力を高めることになります。
他に、クラミジアなどで子宮頚管が炎症を起こしている場合も精子が子宮内に到達しにくくなるため妊娠しにくい状態になります。

免疫因子の不妊は、なんらかの免疫異常で精子に対し抗体を持っている女性に起こります。特に精子不動化抗体という、精子の運動を妨げる抗体を持っている場合、人工授精を行い精子を子宮の奥まで注入しても卵子まで精子が届かず、受精に至いたることができません。

上記に当てはまらない、原因不明とされる不妊もあります。この原因不明不妊は不妊全体の3分の1を占めています。

女性不妊の検査方法・治療方法

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女性不妊の検査方法は実に多くの方法があります。その結果分かった不妊の原因に対し、さまざまな治療を行います。

基礎体温のチェック

不妊を疑って産婦人科を受診する前に、基礎体温を3ヶ月分程度つけておくと問診がスムーズにいきます。基礎体温を付けるには、普通の体温計でなく基礎体温計を使用します。基礎体温計はドラッグストアなどで入手することができます。計り方は、朝目覚めたら布団から出ず、横になったままですぐに体温を計測します。体温計は舌の裏の奥に入れます。これをグラフにしていくと、排卵があればグラフが高温期と低温期の2層に分かれ、分かれ目で一番体温が下がっている日があります。この日が排卵日です。排卵がなければ2層に分かれません。よって、排卵の有無を判断する目安になります。排卵があったりなかったりする場合や、排卵がない(無排卵)と判断された場合、過度なダイエットによる無排卵の場合は体重調整を指導します。高プロラクチン血症が原因の場合は、さらにそれを引き起こしている原因を探り、改善します。多くは長期的に服用している薬の副作用であったり、下垂体にできる腫瘍が原因です。またストレスも関係していると言われており、ストレス軽減に努めることも重要です。

超音波検査

膣内にプローブという細い機械を挿入し、超音波検査を行います。子宮筋腫や卵巣嚢腫を発見することができます。子宮筋腫や卵巣嚢腫が見つかり、それが不妊の原因となっていると判断された場合は手術を行います。また、プローブは子宮内膜の厚さや卵胞の発育程度を正確に知ることができるため、タイミング法や人工授精をより確実なものにできます。

子宮頚管粘液検査

子宮頚管から分泌される頸管粘液を、排卵日の数日前に採取し検査することで、排卵の時期を推測することができます。タイミング法や人工授精と併用すると妊娠の確率が高まります。

フーナーテスト・抗精子抗体検査

3~4日禁欲したあと、医師が指示する排卵日の前日、あるいは当日に性行をしたあと来院し、子宮口や子宮頚管内の粘液を採取します。頸管内の精子の状態を調べ、精子の運動が悪かったり、精子自体が見つからない場合は数回同じ検査を繰り返します。複数回の検査でも結果が思わしくなかった場合は免疫因子の不妊を疑います。免疫因子の不妊であると診断された場合は、なるべく早く体外受精、顕微授精へとステップアップしていきます。

子宮卵管造影検査

子宮や卵管に造影剤を注入し、レントゲンを撮ることで奇形や癒着がないかを調べます。また、造影剤を入れることで卵管の軽度な癒着を広げる効果があるため、検査後数日は妊娠しやすくなる期待が持てます。

ホルモン検査

エストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンの状態を検査することで、卵巣の働きを調べたり、排卵障害を起こしているのがどのホルモン由来なのか調べることができます。

子宮鏡検査

膣から細いカメラを入れ、子宮内部を直接見ることで造影検査ではわからない小さなポリープなどを発見することができます。ポリープが妊娠の妨げになる位置にできていた場合、取り除くこともあります。

不妊原因の男女比

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不妊の原因は、男女どちらに多いのでしょうか。WHOの発表によると、41%が女性側、24%が女性・男性双方ともに、24%が男性側という結果で、11%はどちらに原因があるのか不明という結果だったそうです。不妊治療は女性のものと思われがちですが、4分の1は男性側に原因があり、4分の1は男女ともに原因があるわけです。不妊治療をする際には、必ず夫婦ともに受けることが大切です。

不妊による夫婦関係の問題

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夫婦の内一方が「どうしても子どもが欲しい」と考えており、一方が「できたらうれしいけど、いなければそれでいい」と考えていた場合、前者に対し後者は非協力的に映ることがあります。「こんなに子どもが欲しいのに、相手が協力してくれない!」となり、夫婦関係に亀裂が入ることにもなりえます。こういったことを防ぐために「何歳まで治療してもできなければあきらめる」「治療にかけられる予算はいくらまで」など、あらかじめ決めておくことも必要です。不妊治療は夫婦の協力なくしてできるものではありませんから、治療するにあたってお互いを尊重するという前提を忘れないようにしましょう。